文字とおり横並び

今が好き♪

1999.3.2

いつも見るたびに気になる横並びがある。橋や道路の開通式、ビルや会館の開所式に見られるテープカットの場面である。十人程のおとなが横一列にならび、一斉にはさみで前の紅白テープを切る。テープは当然こま切れ、落とさないようにみんな50センチほどの切れ端をぶらさげている。いつからこんな滑稽なテープカットになってしまったのだろう。本来、テープカットは一人が真ん中でテープを切り、はらりと両側にテープを落として道をあける儀式だったはずだ。きっとはさみをいれるのに最もふさわしい人を一人にしぼる勇気がないのだろう。かくして、得意の横並びが考えだされた。これで人選の問題はいっきょ解決。もう何人いようが平気だ、みんな横に並びなさいだ。

昭和39年10月、東京オリンピック開催の直前に営業を開始した東海道新幹線の開通式の写真がある。東京駅をまさに出発せんとするひかり1号の前にはられたテープにはさみを入れたのはたった一人、当時の石田国鉄総裁だった。あれから30年ほどしかたっていない。今、お作法どおりのテープカットはどこへ行ってしまったのだろう。どうしても何人もでやりたいのなら、最悪でも横並びでなく縦並びでやってもらいたい。テープを人数ぶんだけ平行に張り、テープ一本につき一人がはさみをいれるという案だ。テープの購入予算は多少かさむが、こっちだって何人でもいらっしゃいだ。テープが全てはらりと落ちれば道ができ、切れ端を持つ必要も無い。一斉に切らず、前の人から順々に切っておじぎでもして脇にどいてゆき、最後の一本をカットして完了などと云うのもいいかも知れない。横並びはもうたくさんだ。