少子高齢化

今が好き♪

1999.11.1

高齢化と同時進行で少産・少子化傾向も進んでいる。近頃はどこの家庭でも、子供はたいていひとりか2人だ。ひとりの女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)は戦後、昭和22年の4.54人をピークに減少し昨年は1.38人となってしまった。
夫婦が平均1.38人しかこどもを持たないとすれば、人口再生産は当然マイナスになり、総人口は世代交代を重ねる毎に減って行く。平成10年10月現在、総務庁発表の人口推計によると、わが国の14歳以下の年少人口は総人口126.486千人の15.1%にすぎない。15%を割りこめばもう立派な少子国と言える。人口ピラミッドの底辺がすぼまってしまい、既に生産年齢人口(15~64歳)は年々減少しつつある。

また、同じ人口推計によると高齢化は更に顕著で、65歳以上の老年人口は初めて2000万人を突破し総人口の16.2%、2051万人まで上昇した。高齢化のめやす15%をとっくに越え、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいる。これに伴い、医療保険・年金・介護等の経済負担、再雇用・余暇・生涯教育等の生きがい、文化面の充実といった解決すべき課題が山積しているのはご存知のとおりである。

さて、つい先日、気になる調査結果が発表された。「体育の日」に文部省が発表した「平成10年度の体力・運動能力調査」だ。これは高齢者もふくめた7万人のデータをもとにしたものだが、毎年指摘されているように、若年層、特にこども達の体力が総体的に低下しているという。小学生から20歳前後の若年層までの立ち幅跳び、ボール投げ、1500m走の測定において、昨年の結果は、ことごとくがこれまでの最低を記録し、「戦後最低の体力」と集計担当者から決め付けられたと言う。

近頃では、発育盛りの子供達に腰痛持ち、疲労倦怠、無気力、筋力不足が増え、かぜをひいてもなかなか直らないなど、身体が大きいだけで虚弱体質児が多いとも聞く。そう言えば電車でも、道路でもやたら座りたがる若者が目につく。こんな子供たちが将来平均寿命の80歳前後まで本当に生きられるのであろうか。

一説には、90歳、100歳まで生きられる人は近い将来減っていくのではないかと言う観測がある。戦前から戦後十数年までの物のない、機械化も進んでいない時代に発育期から青年期を過ごしたからこそ長寿なのだと言う。粗食ではあっても食べ物は全て自然食、添加物一切なし、環境汚染から無縁の水と空気。からだに入るもの全てが安全な物ばかりだ。さらに生活のほとんどが人手頼り、朝から晩まで身体を動かして遊んだり、働いたり。物がないから物欲も低く、競争も激しくない時代で、ストレスなどという言葉すらなかった。体力と生活力が今の若年層と根本的に違うのである。
こういった人々が高齢に差し掛かって現代の生活環境や衛生医療の進歩を享受できたから長寿を保証されたのだろう。それに引き替え、ひ弱な若者たちの将来は‥‥?
わが国の高齢化社会は案外、短期間で終わり、短命化社会の危機にとって替わるかも知れない。若者を取り巻くもろもろの環境を改善し、彼らの命と体力を守る短命化防止対策の方も高齢化と対極ながら重要なのだ。