あいまい語

今が好き♪

2000.11.1

ファミリーレストランで、「タバコの方お吸いになりますか?」。書店で、「2000円からお預かりいたします」。テレビレポーター、「では、あちらへ行ってみたいと思います」。など、おかしな日本語が横行している。

「たばこを、お吸いになりますか?」なら分り易いが、の方が付くと、ほかにも吸うものがあったか考えてしまう。2000円の例も、私から預かったはずで、2000円は君が預かったものだ。テレビレポーターの方‥‥は、実際にこれから行くのなら「あちらへ行きましょう」、あるいは「行ってみましょう」で十分。「いつかは、フランスへ行ってみたいと思います」と同じではないはず。 いずれも丁寧語のつもりらしいが、論旨があいまいで奇妙な使い方だ。変な言葉がはやってしまった。

まだある。「きのう、新宿とか行ってきたの」。と言っても、新宿以外の場所には行っていない場合が多く、他の行き先の有無が不明。
「てゆうか~、私って東口はわからない人じゃないですか~。小田急ハルクに行ったのね」。君の知識の有無について同意を求められても、返事ができないじゃないですか~。これも不要な半疑問文。
「それって、西口?わたし的には伊勢丹の方が好きだな~。」

的とは、自分のことではなく、自分に似ている人たちのことか?
「伊勢丹って高級?かな、高い?みたいな‥‥」
本当のところ、自分はどう思っているの??
「新宿もいいけど、今はお台場? ‥‥うん!」
 自分に聞いて、自分であいづちをうって、これでも独り言ではないのだ。と、こんな具合。

主語が欠落し、同音異義語が多く、状況判断や相手との関係、あるいは言外の意味を察することで、本意を判断しなければならない日本語の会話。もともとあいまいな言語の上に、境界がぼやけしまった男言葉と女言葉、さらに尊敬語・謙譲語・丁寧語などの敬語の用法も乱れて、正しい会話は誰にとっても、もはや至難のわざだ。国語審議会でなくと憂える人は多い。
 若い女性や主婦を中心にはやりだした前述の如き会話は、こうした傾向が生み出した一つの副産物というべきか。日本語をさらにあいまいにし、真意を伝えず、発言の責任もとらず、結論も不要。会話の調子とはやり言葉そのものを楽しむための方法としては、案外いいかも知れない。さりとて、まねる気はさらさらないのだが‥‥。