ヨット

柿崎 純一郎

1999.5.13

 

東京は江東区、荒川河口に「夢の島マリーナ」という都立のヨットハーバーがあります。平成4年3月オープン。昨年、運営管理が都から第三セクターの東京テレポートセンターに移管されました。ヨット・モータークルーザーなどのプレジャーボートを600隻以上 繋留でき、駐車場は500台収容。車は湾岸道路新木場IC、電車では京葉線新木場駅下 車でアクセス。すぐ近くに夢の島公園・熱帯植物園・第五福竜丸展示館があります。3年 前に開港した「横浜ベイサイドマリーナ」と並び、わが国有数の設備と収容艇数を誇りま す。

 ここに、8名の共同オーナーでヨットを所有しております。艇名「マーベリック」、ヤマハ製、31フィートのセイリングクルーザーで定員12名、四級小型船舶免許で操縦で きます。エンジンが付いていなければ操船に免許は不要ですが、キャビン付きのヨットに は離着岸や機走のために小型のジーゼルエンジンがついています。自動車とちがって小型 船は、船に一人でも免許を持った人(船長)がいれば、無免許で、誰もが舵(ティラー) を握って操縦できます。繋留費は月あたり9万円近く、年1、2回陸に揚げて(上架)船 底塗装をしたり、擬装を保守したりしますから、燃料費が不要でも、維持費が年間130 万円ほど掛かります。共同所有艇が多い理由です。米国西海岸には数千艇繋留の有名なマリーナ・デル・レイをはじめ、海岸沿いに無数のマリーナがありますが繋留費は、私たち の船程度だと、どこも月あたり1万円以下とのことでした。どうしてこう、日本はなにも かも高いのでしょう。また、帆走するには最低2、3名、レースでは4、5名が必要です から経費面以外でも複数オーナーが便利です。

 3月から11月は毎月1回のクラブレース。ヨットの大きさ、船形や擬装によりゴルフ と同じように、レイティングというハンディが付きます。従って1着(ファーストホーム、 ゴルフのベスグロ)の船が優勝というわけではありません。レイティングは船固有のもの で乗組員(クルー)には関係がありません。ゴルフと逆で、速い船ほど大きい数字になり、 その分所要時間が加算されます。同型・同擬装艇ならレイティングは同じ、操船技術が順 位の決め手になります。この点、ゴルフのようにへたでも優勝、ということはまずありま せん。
 毎回40から50艇が出艇し、操縦の技量によって遅い船(クルージングクラス)、速 い船(レーサークラス)、に分かれてスタートします。ディズニーランド沖海域で、普通 、 2等辺三角形左回りと直線部の往復をまぜたオリンピックコースというコースレイアウトで速さを競います。

 

コース周回長は6海里前後(ノッティカルマイルと言い陸上のマイルより長い、1海里=1852m)、ジグザグで風上にのぼりますから実帆走長は7、8海 里ほどです。風や潮の状態にもよりますがだいたいの目安は、50フィートの大型艇など、 レーサークラスは1時間ほど、我が艇は2時間余、遅い船は3時間でフィニッシュです。 毎年8月には前夜集合、艇内泊で、早朝6時スタート、千葉県富浦港からマリーナまでの ロングレースもあります。こちらは所要8から10時間、運がよければ途中、イルカに会 え、芸達者が混じっていればジャンプもしてくれます。

 最高速度はエンジンによる機走では6ノット(6海里/時、時速11km)がせいぜい ですが、帆走では10ノットを越す場合があり、そう快です。風上帆走(クローズホールド)では艇が傾き(ヒール)、気をゆるめる事は出来ませんが、追い風帆走(クオーター ラン、ランニング)では操船に余裕ができますから、ビールを飲んだり、食べたりです。 酒を飲みながらスピードレースができるのはヨットぐらいでしょうか。

 レースの無い日は、レインボーブリッジをくぐったり、海ほたるを一周したりののんび りクルージング。この5月連休には房総半島、館山港まで行きました。夏は例年、大島南 端、波浮港まで行きます。帆に風をはらみ、静かに走るヨットは普段の生活や仕事場から 切り離された別天地です。ゴルフの前夜も楽しみですが、ゴルフではストレス解消どころ か落ち込むこともまま。ヨットは前夜も当日も楽しみで、どこまでいっても交通 費も宿泊 費も無料、大いにストレス解消になります。
 反面、強風や大波、座礁、衝突、本船との遭遇・回避など命に関わる危険と隣合わせで すから手放しで遊んでいるわけにはいきませんが。

 近年、船舶免許の取得者が急増しています。ジェットスキー用に所有する若者が主で、ウインドサーフィンと共にはやりとなりました。こうした、言わば手軽なマリンスポーツ は盛んになりましたが、わが国は八方海に囲まれたわりに、プレジャーボート人口は少な く、湾内でも港でも漁船ばかりが目立ちます。
 マリーナの増設・整備と利用料金の低減などヨット所有の条件が改善され、無理なく、環境にやさしいマリンレジャーが楽しめる様になること願っています。今度の都知事はご 承知の様に、この方面にも通じていて、マリンライフの先輩格です。海に目を向けてくれ ることを期待しているのですが、現状では当分、無理でしょうか。