メキシコ白虎隊--メキシコの街角にて--

中野 章

1999.7.14

 

メキシコ市西南にチャプルテペックなる広大な園域を誇る公園がある。
 公園内には城、動物園、美術館、博物館等の施設・モヌメントが揃っているいるが、なかでも世界的に有名なのは国立人類学博物館である。
 またモヌメントとして、ひときわ異彩をはなっているのは高々と並び立つ6本のポールである。名づけてニーニョス・エロエス・モヌメントという。
 少年英雄記念塔である。1847年メキシコと米国との戦争でメキシコ市は一時米軍に占領されたが、その時、このチャプルテペック城に拠り、最後まで抵抗し玉砕した16歳~17歳の6人の少年士官生徒があった。
 この時より20年後の日本の会津白虎隊の最後を髣髴させる物語ではある。
 メキシコの笑い話に「神がメキシコを創造したとき広大な土地と資源とそれに見合う人口を与えた。神は、これで良し、この国はきっとよい国になるであろうと満足げに呟いた。然し神は大きな忘れ物をした。それは立派な政治家を造らなかったことである」というのがある。

 

よく知られているように歴代の大統領には私腹を肥やし、挙句の果ては追われて外国に亡命するというパターンで、国民の敬愛を受けた大統領は少ない由。そんな中で原住民出身の大統領ベニト・フアレスは、その任期(1861年~1872年)中、教育、産業振興等メキシコの近代化に大きな貢献をし、20ペソ札に印刷され、メキシコ国際空港の別名「ベニト・フアレス空港」にその名を冠しているように国民の敬愛の的である。
 メキシコ人が決して悪口を言わず、冗談の種にしないのが、このベニト・フアレス大統領と6人の少年英雄である。ちなみに案内してくれた学生達(第一回で紹介)に6人の名前を質問してみたらスラスラと答えてくれた。
 小学校の中学年でキッチリと教わるとの事であった。