メキシコ国立キャンパス風景--メキシコの街角にて--

中野 章

1999.7.26

 

InstitutoPolitecnicoNacional(IPN:国立工業大学)を訪れた。
 この大学は電気通信大学が提携している外国大学の一つで毎年修士レベルの学生数名が電通大に留学するようになっている由。
 Politecnicoの名称が示すように理工系総合大学である。
 メキシコ市、メキシコ州及び国内各地にキャンパス、研究所および付属高等学校があり、学生生徒数18万人と聞き及ぶ、大規模学園である。
 今日はその本部キャンパスをたずねてみた。メキシコ市北部のサカテンコ地区にあるため通称「サカテンコ」と呼ばれている。さすが大規模学園の本部だけにその校地も広大で、キャンパス内にミニバスが走っている。
 しかし、このキャンパスの名物はなんと言っても「ケソ」(queso=cheese)である。つまり「チーズ」である。といって、訪問者にチーズをご馳走してくれるわけではない。
 キャンパス正門を入るとすぐに大講堂がある。なんとこの大講堂の屋上に巨大な白い塊がどっかりと乗っているのだ。なんとも形容しがたい景観ではある。
 これを彼等はケソ=チーズとみたて、いまやこの大講堂は、さる偉い人の名前を冠した記念講堂であるらしいが、「ケソ」と呼びならされている。
 同伴の学生諸君に「誰が、何のために」と聞いてみたが、ただ首を振るだけであった。あとで先生の一人に同じ質問をしたら、「さーてね、建築デザイナーの気まぐれか、よほどチーズが好きだったからでしょう」とこれまた無責任な返事であった。このあたり、ものに拘らないメキシコ人気質の一端を垣間見た感じである。

 

市内北郊にある本部キャンパスに対して南郊に同大学のキャンパスの一つ、通称「ESIME」がある。同伴の学生諸君はここに通学している。
 規模は本部と比べてウンと小さく、学生数も3000人程度、校地も電通大と同規模と見うけた。
 わが市内探訪はここを起点終点としているので、キャンパス内の学生の姿を観察することが出来た。日本の大学キャンパスを数多く観察しているわけではないので、比較の対象は電通大ぐらいであるが、二三おやと思ったことがある。一つは女子学生の数が多いことで比率としては約4割を占めるそうである。このキャンパスには機械、電子、通信、および情報工学科があり、この学科に女子学生が多く、全体の比率を上げているとのことである。女子の有利な就職先としてソフトウエア関係が多いとのことで、このあたり万国共通か?

 その2は学生の年齢層が幅広い(と見えた)ことである。事実在学期限は10年を限度として、ストレートに卒業する人よりも、働きながら就学、休学、そして復学する学生も多い由、そんな所為で教官か学生か分からない人もいた。教官と学生といえば、校庭のあちこちで先生と思しき人と複数の学生が握手し談笑?してるのを見た。また、たまたま、ある先生の部屋で休息している折には、ひっきりなしに学生が出入りし、どうやら試験の結果を聴きに来たのか、貰った点数にクレームをつけに来たようである。対して先生はいちいちパソコンのディスプレイ上で何やら説明をし、学生は納得し引き上げるという構図のようである。
 学生と先生が少なくとも表面的にはフレンドリな感じであった。と思うのは、もっぱら先生方を敬遠していたオールドボーイの私自身の見方かもしれない。