長浜曳山まつり2

角田 稔

2006.7.2

 長浜曳山まつりは古い伝統を伝える八幡宮の春祭りである。もっと時間を取ってゆっくりと楽しむべきであった。祭りを維持伝承し、盛り上げる町衆の熱気を伝えるために少しばかり記録を付け加えておこう。

 御旅所の曳山 13基の曳山は各町の山蔵から引き出され、今年は23年ぶりで御旅所に勢揃いした。御旅所の中央北側に位置して南面する神輿堂前から見て右側(西側)に、順に、長刀山(なぎなたやま、小舟町組)、今年の出番山の壱番山の寿山(ことぶきざん、大手町組)、二番山の猩々丸(しょうじょうまる、舟町組)、三番山の高砂山(たかさござん、宮町組み)、四番山の鳳凰山(ほうおうざん、祝町組)と並び、同じく左側(東側)には暇番山の月宮殿(げっきゅうでん、田町組)、青海山(せいかいざん、北町組)、諌鼓山(かんこざん、御堂前組)、春日山(かすがざん、本町組)、孔雀山(くじやくざん、神戸町組)、萬蔵楼(ばんせいろう、瀬田町組)、翁山(おきなざん、伊部町組)、常磐山(ときわざん、呉服町組)と並ぶ。
 曳山は舞台(およそ4畳半の広さ)、楽屋(ちん、囃子演奏の場所)、下山(四つ車の台車)の4部分で構成されている。舞台屋根、破風、舞台前柱、舞台障子、舞台虹梁、舞台天井、舞台親柱、勾欄親柱、胴幕、見送り幕、見送り彫刻、面幕、幟、亭と、各山それぞれが競い合うように、何れも匠を凝らして豪華に飾り立て、製作当時の人々の意気が伝わってくる。例えば、出番山については順に、それぞれ、中国蘇州製総刺繍の胴幕、中国明末期の金緞子の面幕、オランダ製紺羅紗の胴幕、16世紀後半ベルギーブリュッセル製タペストリの見送り幕(重要文化財)と外国から輸入されたものを用いている。長刀山だけは形式の違う曳山で、三つ車式の台車であり屋台上には太刀渡りに用いる太刀を飾る太刀懸を立て、胴部の周囲には前後一個ずつ、両側面二個づつのケヤキ材を用いた唐獅子を飾り、八幡宮には曳航されず、戻り山には先頭に立って出発する。

 子ども歌舞伎 年はじめ、三役(振付け、太夫、三味線)、役者を先ず決め、春休みに稽古を始める。4月9日から17日にかけての祭礼行事はびっしりと日程が組まれている。江戸中期から子ども歌舞伎は始まったというが、行事の詳細を少しばかり紹介しておこう。
 9日線香番と呼ばれる時間係が出番山組稽古場で狂言が40分(線香の燃える時間で測る)以内に納まる事を確かめる。9日から12日まで毎夜8時頃から各組若衆が稽古場から豊国神社、八幡宮へ裸でお参りする裸参りの行事がある。このときくじ取り人の若衆は赤鉢巻を付けて先頭で水ごりをする。

 13日は未明から全山組の若衆が笛、太鼓、すりがねの囃子で町内の祭礼関係者を起こして廻る起こし太鼓から始まり、7時に八幡宮から曳山に祀る御幣迎え行事が行われ、仮衣、烏帽子姿の御幣使と呼ばれる少年が御幣を受ける。10時には八幡宮から御旅所へ神輿渡御がある。午後1時くじ取りの神事では一番くじを願ってヨイショヨイショの掛け声とともに扇子を振り上げる中をくじ取り人が神前でくじを引く。
 14日11時に各山組町内で狂言を行い、13時末番山組から順次八幡宮境内に曳山を移動させ、拝殿前神前に向かって整列する昇り山がある。筋交い橋の前で正装して神前に入る。19時末番山組の役者を先頭に、役者の行列が八幡宮から各山組の自町に渡りかえる役者夕渡りがある。
 15日は本日である。未明から出番山組町内で起こし太鼓、7時に八幡宮で春季例祭がとり行われる。7時ごろから役者が化粧や衣装を整え、夕渡りと同じように、若衆、役者が行列を組んで八幡宮に渡る朝渡りがある。猩々丸の出番の時だけ朝渡りに奴振りが行われる。8時30分までに八幡宮に行列は到着。9時八幡宮に長刀組行列到着、先頭には大きな金弊、次に武者を案内する力士(若衆が務め、紋付着物、角帯、すそからげで臀部を見せ、前は化粧回しをつけ、尻まくりの姿)、次に鎧武者(子どもが務める)が2-3mの長い木製太刀を帯び、従者を連れて歩む長刀組太刀渡りが9時20分ごろ八幡宮に到着。太刀渡りが暫時休息の後御旅所に出発し、最後が境内をでると(9時35分)、長刀組の裃姿の中老が長刀組と書いた札つきの青竹を抜き、3回神前に向かって振り、壱番山の亭(本屋の上の屋台)に向かって差し出す翁招きがある。これを受けて壱番山は囃子を始め、狂言奉納が行われる(9時55分)。壱番山から狂言奉納が行われ、11時頃より、順に宮町通り、大手町通りを巡行、途中狂言を行いながら御旅所に向かう。御旅所手前のみのり橋前で正装、御旅所で神輿堂に面して本日最後の狂言。狂言終了し、各山が所定の位置に並ぶと、午後9時神輿還御の儀が始まる。七郷の人々が神輿座から神輿を担ぎ出すと、壱番山から戻り山の囃子が始まり、次に一斉に囃す。神輿が御旅所を出て辻の札を越えると、午後9時30分長刀組から壱番山へと順次行列を整えて自町に戻ってゆく戻り山がある。役者の子どもたちは狂言が終わると直ぐにつれて帰り、風呂に入れて親元に送る。
 16日後宴がある。10時ごろより出番山組町内で1回と市民会館で子ども歌舞伎観劇会で1回、夜は2回演じ、其のうちの1回は山蔵前で千秋楽と称する最後の狂言を行い、その後に山を山蔵に入れる。17日8時13日に迎えた御幣を八幡宮に返す御幣返しが行われる。
(参考資料:冊子猩々丸、その他パンフレット)