両国から両国

とまりぎ

2005.9.22

暑気払いで船旅を楽しもうということになった。両国駅西口に集合した4人は、ほど近い水上バスの発着場から乗船した。1時ごろ岸を離れるとすぐ、非常時の救命具の使い方がきれぎれに聞こえる。吾々は後方のエンジンの上の甲板テーブルに陣取ったので、よく聞き取れないのだ。船は1階客室のみで2階デッキがあるものの、極めて安定性のあるスタイルである。客室はガラス張りで眺めもよく、空調されており快適だが、外の風も気持ちがよい。何組かの小団体もあり、客室はほぼ満席状態であった。面々にワンカップの焼酎が配られて乾杯。飲んで減ったらトマトジュースを継ぎ足すという一風変わった飲み方ではじまった。(トマトジュースは無塩はうまくないそうだ)

船は隅田川を下り浜町、浜離宮、船の科学館などに寄り東京湾に出、荒川を遡り平井発着場に寄ったあと、墨田水門(隅田川との連絡運河)を横目にさらに進み鹿浜橋の先でUターン、岩淵水門の狭いゲートを潜り隅田川に入る。また遡って新荒川大橋の先、小豆沢(あずさわ)まで行く。そこから引き返して、浅草の街並みを目にし、両国まで戻る約5時間のコースだ。(日曜、祭日の特定運行)

橋を通過する度に案内の放送がある。もちろん目に付く建物や施設の案内もある。両国橋から始まり永代橋、勝鬨橋、レインボーブリッジ、荒川河口橋、平井大橋等々パンフレットでは48を数える。橋の形や色などまこと変化に富んでいる。それ以外に鉄道の橋も10は下らない。つくばエキスプレスがつい先ごろ加わったばかりだ。が、ひとたび大地震や台風などの災害が発生した場合、どうなるのか大いに不安も感じた。

発着場に着くたびに、乗降客がいて、なるほど水上バスという名にふさわしい。重宝にしている人もいるのである。その都度救命具の場所と、指示に従うよう放送が流れる。船の車掌さん(なんと呼ぶのかわからないが)を見ているとこれが結構忙しそうだ。発着場に着くたびに船をロープで係留、つぎに橋げたの段差にスロープ板のセッティング、乗船券のチェック、出発の際の逆作業。これらはトランシーバーにより船長いや船頭?との連絡をとりながらの作業だ。事故防止の気遣いは大変だと思う。雨模様であったらなおさらだ。自動販売機への缶飲料の補充。低い橋を通過する際の2階デッキに出ている客が安全かどうかの監視などなど男女二人でこなしていた。(本コースの発着場・バス停は14)

普段には無い方向からの眺めと、川面に近い目線で見る景色は新鮮であった。勝鬨橋の向こうに立ち並ぶ高層ビル群、海上から眺める浜離宮、お台場海浜公園、葛西臨海公園、高速道路等々。下から見上げる巨大なレインボーブリッジ。千住あたりでは水上スキーを楽しんでいる人、岸辺で釣り糸をたれている人、ただ川を眺めている人など。隅田川の下りでは鴎が何羽も追いかけて来てデッキの客が抛りなげる菓子を器用にキャッチしたり、外したり、川面で一休みしたり。飽きない船旅であった。日頃の行動範囲や思考から外れているが、こうして船にのってみると、何か捨て難い気がし、また想像以上に船が利用されていることを改めて認識した。

両国に戻ると、もう6時で薄暗くなりかかっていた。もっと日の短い時であれば船から見る街の明かりはさぞきれいだったことだろう。下船の客のやれやれという感じの顔と顔。

少々の"つまみ"しか入っておらず、お腹がすいていたので、"ちゃんこ鍋"を味わいながらの一杯が格別であった。