(番外編)鹿塩温泉

とまりぎ

2005.12.21

"とまりぎ"の仲間3人で三たび10月末、「日本温泉クラブの集い」に参加した。開催地は長野県下伊那郡の大鹿村、宿は鹿塩(かしお)温泉である。南アルプス主峰の赤石岳や塩見岳などの麓にあたる。

高尾駅から鈍行で飲みながらの旅、 小淵沢 駅で乗りついで岡谷駅までのんびり楽しむ。迎えのマイクロバスで中央自動車道を南下、松川インターチェンジで降りJR飯田線伊那大島駅をよこぎり天竜川を渡り小渋川沿いに進み小渋湖を過ぎる。さらに塩川をさかのぼって大鹿村交流センターに到着する。すでに暗い。山並みを眺めながらの約2時間のドライブであった。

社団法人日本温泉協会理事の主催者挨拶、大鹿村々長による地元歓迎挨拶のあと、温泉研究家・郡司勇氏の記念講演。温泉観察のポイントは色、味、匂、肌ざわり、新鮮さの5つで、とりわけ新鮮さが一番とのこと。各地の温泉を映しながら豊富な体験にもとづく薀蓄は淡々とした語りくちである。山塩館に移って入浴のあと約50名の懇親会。郡司氏を囲んでの二次会にも参加し零時ごろ散開した。

ここ大鹿村には古い史跡や文化が多く遺されているほか、約1万年前にできたとされている関東から九州にいたる大断層「中央構造線」が村の南北に縦断しており、その断層が地表にあらわれている場所があるそうだ。また海水とおなじくらいの塩分濃度の塩水が湧き出していて昔から生活に利用されていたとのこと。温泉はこの塩水を加熱しているもので泉質は含硫黄Na塩化物冷鉱泉、効能は皮膚病・糖尿病・切り傷・婦人病である。舐めてみると確かにしょっぱい。さらっとしており肌をなでるとつるつるするところは、一般にべたつく感じの塩化物泉と異なる印象だ。この夏、山塩舘では村の活性化をめざし昔ながらの煮沸による塩つくりを復活させ土産としても売り出した。

きのうの快晴とはうって変わって小雨模様。特産品直売所"塩の里"で2台のマイクロバスに分乗。まず"中央構造線博物館"で岩石の切断研磨標本をいろいろみたが色といい模様といい大変きれいであきない。すぐ隣にある"ろくべん館"では江戸時代から続いている大鹿歌舞伎の衣装や昔のくらしの道具などを見学。きょうは村長さんみずからの案内で熱弁留まるところなし。"ろくべん"は5~6段重ねの箱入弁当のこと。大鹿歌舞伎は国の無形文化財で毎年5月3日と10月第3日曜日に定期公演がひらかれている。つぎの予定では"夕立神パノラマ公園"で南アルプスの絶景観賞となっていたがあいにくの天候で中止となり残念のきわみ。かわりに国重要文化財である古民家の松下家を見学し、最後にこれも国重要文化財の福徳寺本堂を見学した。平安末期創建とつたえられているが現存の本堂は鎌倉時代のものである。村長さんのご配慮で堂をあけていただき阿弥陀如来、薬師如来、毘沙門天、聖観世音菩薩をじっくり拝観することができた。(4体は村指定文化財)

さてここで仲間のひとりが所用で名古屋に向かうため別れる。愛知在住のご子息が車で迎えにこられ、なんだかうれしそうであった。

このあと村内にあるもうひとつの温泉、小渋(こしぶ)温泉・赤石荘で昼食と入浴。泉質は ナトリウム 塩化物炭酸水素塩冷鉱泉で鹿塩温泉と同じようであるが肌合いがよりなめらかに感じられた。高台に位置する露天風呂は真向かいに南アルプスの山並みがせまるすばらしい眺望。が・・・ときおり切れる雲間からの眺めであった。

塩の里にもどり解散。ふたたびマイクロバスで高遠経由茅野駅まで送っていただいた。