番外篇(涸沼)

とまりぎ

2007.2.3

10月大型台風の直前に涸沼にある、公共施設いこいの村へ行った。涸沼へ流れ込む川は笠間のあたりを源流とする涸沼川で、あまり大きくない。流れ出る川も涸沼川で、那珂川へ合流し大洗と那珂湊の境で太平洋へ注ぎ込み、海までが近いため満潮時には海水が沼まで入り込む。東西に長い形になっていて、いこいの村は湖岸の南側のほぼ中央にある。この場所を選んだのは、東京から比較的近くの公共の宿で、温泉でもあるからだ。

常磐道の友部JCTから北関東自動車道へ入り、最後のところにおまけのように有料道路があり、ひたち海浜公園でおりる。朝からの小雨だがこの程度ならと、この公園へ入ってみる。
 ちょうどコスモスの時期で、あちこちに咲いているのが見える。地図を見るとかなり広そうなので、自転車を借りて奥の方まで入り込む。海に近いところに小山があって、全山がコスモスになっているのを見て登る。頂上からは海が見える。自転車道のほぼ全てを回ってたしかに広いことがわかった。元のところへ戻ったので自転車を終わりにする。
 海沿いに那珂湊、大洗を通って、このあたりだとの見当で涸沼の北側から一周してみようとそれらしき道へ入る。細い道だが所々で沼に沿って進み一周できるようだ。地図では小さな沼だが、その周りは意外に長い。南側まで来ると車が多くなって、いこいの村の標識も見える。小雨はずっと続いている。

さて、温泉はどうかと入る。思ったほど熱くない。これならじっくり入れそうだと、窓から涸沼を眺めつつかなり長く温まる。ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉との泉質表示にあるとおり肌にやさしい。
 翌朝、朝食前にも入る。窓から見える涸沼は黒雲の下に、近づきつつある台風の影響で、東からの雨混じりの風を受けて波が強い。これは落ち着いて長居はしていられないなと思いつつ、朝食に向う。
 バイキング形式でお盆に一応とりそろえ、少し奥の方へ行こうと半分ほど入ったところで、片方のスリッパがズルリと後ろへすべった。両膝をついたがお盆の上は大混乱になってしまった。足元を良く見ると、浴衣のすそが濡れている。さらに床には水が溜まっているではないか。これではスリッパで安全に歩けるはずがない。跳んできた係りの女性に「床がぬれている。」と言ったところ、あわてて従業員全員がふき取り作業に入った。
 台風の雨が横殴りに吹きつけ、夜中のうちに食堂の中央にたまっていたものとみえる。各テーブルの用意は、昨夜のうちに済ませてしまって、朝の食堂全体のチェックは必要なしとして、いつもの如く食事時間に望んだのであろう。

膝の痛みを覚え、これが民間の宿であったなら同じことになっていただろうかと思いつつ、風雨の中、早めの帰途についた。