番外篇(伊豆)

とまりぎ

2007.11.20

今年度の東京都異業種交流プラザ62の幹事団は、工場見学やら宿泊研修やらで、けっこう遠方へ連れて行ってくれる。今回11月はその宿泊研修である。事前の説明後の連絡が多く、内容が直前まで細かいところでの変更があった。渋谷8時45分集合には9人なんとか揃い、幹事の中学時代の恩師で、現在東京農大の講師である先生が今回の案内をしてくださる。

首都高速から東名で沼津から韮山の願成就寺、江川代官屋敷の次に反射炉を見学後昼食。以前からこの地にあることだけは知っていたが、初めてだ。写真でエントツがふたつだと思っていたら、4本あり炉も四つあることがわかった。晴天に見上げると陽にあたって、まぶしい。江戸時代に大砲を造っていたというから、独自の技術習得があったに違いない。大砲は江戸湾のいくつかの台場も江川太郎左衛門が造り、そこへ設置して江戸の防備にしたものである。
午後函南の果樹園では先生と昔の同級生である苺を大規模に栽培しているところを見させていただき、次に柿園を見ることになった。マイクロバスへ一緒に乗って、道案内をしていただくのだが、山道へ入り細くなった農道に、通れるかという不安がよぎる。しばらく入ると両側から道へ飛び出している木の枝と背の高い笹が垂れて側面を擦る。下は舗装されてはいるが急なカーブがいくつもあって、タイヤがはみ出すのを運転手は最も気にしていた。それは時間にして15分ほどであったかもしれないが、たいへん長い道のりであった。
ようやく目的の柿園へ到着したが、帰りのためにバスを方向転換しなければならない。柿園のふたつある入口を使って、運転手は何度も試みるが入口が狭くうまくいかない。さあどうしたものか。ふたつの入口のうち、両側に木柱を立てているのを抜けばなんとかなりそうだということになって、抜こうとするがひとりの力では無理だ。数人がかりで10分ほどかかってようやく両側が抜けた。これでなんとか方向の反転ができた。

柱はあとで農家の方に入れてもらうことにして、柿園へ入る。よく知っている次郎柿も大きいが、種類の違うさらに大きい五百グラムもあるというものが大量にできている。食べられそうな色をしているが、熟すまでにまだ日数があるようで、残念ながら柿の味見はできなかったが、そばにある蜜柑を食べていいということになって、小枝ごとバスへ持ち込む。
 さて、帰りは同じ道だがまた細心の注意をしてゆっくり下る。先ほどと同じ枝と笹がバスの側面を擦る音が何回もして、ようやく下の道にたどりついた。バス内に拍手がおこる。プロであるとはいうものの、冷静な運転とあきらめずに方向転換をやりとげた運転手に対する、賞賛と感嘆、そして感謝である。
 修善寺が開湯1200年にあたるというので、源頼家の墓にだけ寄り、夕暮れが迫る頃、シダックス経営の宿、ワイナリーヒルへ入る。実は先生がシダックス会長とも同級生だったとのことだ。ナトリウム・カルシウムー硫酸塩泉の温泉へ入り、夕食後幹事の奥さんが琵琶の弾き語りをやってくれて、落ち着いたところで会の今後の運営について語りつつあるところで、夜も遅くなったので各部屋へ戻る。
 
 翌朝も晴天で無風というたいへん条件のよいところで、ホテル敷地内の富士がよく見える高台にあるシャトーT.Sというワイナリーへ行く。ソムリエが迎えてくれて、ワイン製造工程と葡萄園を見せていただいたあと、ワインの試飲だ。残念だが、好みに合う味ではなかった。次は沼津の魚河岸「丸天」で昼食後、駿河台へ移動し、ビュッフェ美術館、井上靖文学館、竹の博物館を次々に見て廻った。午後の陽が黄色くなりかけた葉を明るくして、いい雰囲気だ。

参加者が予想より少なかったのだが、地元の土地と人をよく知った方が案内してくれたので
時間の無駄なく、計画の場所をすべて廻ることができたことは、幸運な旅であった。