青木鉱泉

とまりぎ

2008.8.11

関東の梅雨明けの日に4人で青木鉱泉へ向かった。9年前の春にも行っている。とまりぎ旅行で同じ宿を訪れるのは初めてで、また夏というのも初めてである。高尾駅から例によって鈍行の旅。韮崎駅に降りる。登山シーズンに入ったので路線バスが運行されていて、ほぼ満員のマイクロバスで小一時間、青木鉱泉に着いた。

青木鉱泉は鳳凰三山・地蔵岳(2,764m)山麓にある一軒宿である。明治初年の創業当時をそのまま復原した木造二階建ての本館と右側にロッジ風別館、左側に平屋の離れがある。本館の天井の梁や丸窓、雪見障子などは明治の浪漫情緒が溢れているとの謳い文句だ。

本館の前はひろい広場で、ぶ厚く長~い一枚板の卓と椅子が前と同じ位置にあった。板は年輪が浮きでたり、蟻が巣くっているなどさすが朽ちていた。当時びっくりした自動販売機のそばに屋根つきの休憩所が新たに出来ていた。宿に入らずしばらくウロウロする。重装備の登山客が降りてきては入浴に行く。白いトラノオに蝶が遊び、うす紫のウツボグサに蜂がしがみつく。宿に声をかけ、三角屋根のロッジに案内される。宿の人の話では原油高で薪割り作業が増えたとのこと。薪が積み上がっていた。木々の緑を眺め、鳥の声など聞きながら酒を飲み、横になったりしてのんびり過ごす。湯に入る。透き通った極めてさっぱりした湯である。泉質は緑盤泉で胃腸病、神経痛、貧血などに効くという。山女の塩焼きや山菜天ぷらなどで夕食。また湯に入ったあとは何もすることなく7時半ごろにはみな寝てしまった。

翌朝、ドンドコ沢沿いの登山道を登る。地蔵岳への道だ。沢にある四つの滝のうち、一番手前の南精進ヶ滝を眺めて帰る計画だ。けっこうな登りだ。小さな白いナデシコ(センジュガンビ)が目につく。2時間ほどで滝の音が聞こえ、道を左に外れてやや下る。大きな岩をよじ登ると堂々たる滝が目に入る。下から見上げる滝は力強い。轟音とともにしぶきに濡れながらしばらく観賞。登山道に戻って、ちょっと登ると展望台だ。滝を見ながら早めの昼にした。山に向かう人が通る。宿に戻って聞いたら滝の落差は80~90mとのことだった。下りは極めて快調。眺めのよい大きな堰堤(小武川第三砂防堰堤)の河原に入り休む。カンカン照りであるが山の上は相変わらずの雲で見えない。もうすぐ宿だ。

発車時間より1時間も早くバス停に並んだ。時間が迫ると列ができた。運転手が乗せきるのに四苦八苦していると、客のひとりが"列車に遅れるから発車させろ"とわめき、運転手と鼻白んだ場面もあったが何とか発車。途中の御座石鉱泉では10人ほどが待っていた。とても乗れず御座石鉱泉のマイクロバスが準備され2台で韮崎駅に向かった。
  韮崎駅の広場の植え込みに座り缶ビールで乾杯。鈍行のボックスにうまく席がとれ日本酒をやりながら高尾駅まで。駅前の食堂・玉川亭で食事をして家路に付いた。

とまりぎのエッセイとして青木鉱泉の"山の中"がある。御座石鉱泉もやはり9年前の秋に行っており、"秋の山の中"がある。