番外篇(桜)

とまりぎ

2009.3.31

3月末の休日午後、江戸川橋に4人が集まった。最初の話では四谷から飯田橋への中央線沿いの土手の桜を見ながら歩こうということだったのだが、詳しい人が神田川の方がよさそうだというので、変更になった。

  予報ではかなり寒いようだったのだが、風もなく、陽が射して若干暖かくなったせいか人出が多く、ところどころ広くなった場所には宴会の集まりが見られた。桜は三分咲きといったぐらいだからだろうか、比較的静かで落ち着いた雰囲気だ。川沿いに上流へ向って歩くと、椿山荘の入口に人が多い。中へ入ってみる。三重塔まで歩いて出る。
 上流の隣には芭蕉庵があり、ここへも入る。そう広くはないが庭は自然のままで、名に相応しい雰囲気がある。さらに上流側に新江戸川公園と続けて入る。桜の木は少ないが、静かな公園だ。園内の長椅子に腰掛けて池を見る。鳥の声は聞こえるが水面に泳ぐはずの水鳥は居ず、鯉と甲羅干しの亀が見える。
 道順を調べてくれてきたひとが、次に神田川を越えて甘泉園公園へ連れて行ってくれる。水稲荷神社の入り口を入ると左手に剣豪堀部安兵衛の碑が見え、その向いの公園の上から都電の線路側へ下る。池を回ると出口に枝垂桜が満開の様子。カメラを向けているひとの横をぬける。

 再度神田川を越え、金乗院へ入り丸橋忠弥の墓を見る。長宋我部と書かれた墓が近くにあるから、長宋我部氏と縁があるのかもしれない。ここは江戸の黒、白、赤、青、黄と五不動のうちのひとつ、目白不動だ。

坂を上って鬼子母神方面へ歩くと、都電の停留所。乗ってみようというので、飛鳥山で降り、また桜を見る。咲加減は神田川とほぼ同じ程度だが、下町に近いこともあるせいか、酒席が多く、にぎやかだ。この不景気の時期だが、それを感じない雰囲気がある。あるいは不景気だから、景気よく花見ぐらいは盛り上がろうといったところかもしれない。
スタートから3時間を経過し、ゆっくりした歩きであった割には疲れたのと喉も渇いたので、王子の町へ出て店へ入る。すでに客が幾組かテーブルを囲んでいる。まだ夕方といっても5時前なのだが、花見帰りの客を見込んで早くから開店していたようだ。40年近く昔からの知り合いで、久しぶりに会ったものだから、近況をいろいろと話したところによると、それぞれ環境は変ったが何らかの仕事を続けているとのことだった。まわりの環境を別にすれば、とりあえずの健康と気力によって続けられるだろう。

上野、井の頭、新宿御苑といったあたりでの花見は過去にもあったが、神田川の江戸川橋は行くことがなかったから、初めてでしかも川沿いに雰囲気の良い庭園を開放してくれていたのが、なかなかいい感じである。東京には江戸時代からの旧跡がけっこう多いことにも驚かされ、調べてきてくれた人の準備に感謝した一日だった。