猿ヶ京温泉

とまりぎ

2013.03.11

5月下旬 上越線沼田駅に5人が降りた。空は晴れ。バス待ちの間に蕎麦屋に入る。バスに乗ること小一時間、バス停 猿ヶ京温泉で降りた。しかしここは温泉街ではない。国道から赤谷湖(あかやこ)が見え、道を下って湖畔に行く。小高い緑に囲まれ広々と解放感たっぷりだ。赤谷川にできたダム湖であり昔の温泉街や集落が湖に沈み、新たに現在の地に猿ヶ京温泉が出来たそうだ。いま進行中の八ッ場ダムと川原湯温泉の関係に似ている。

国道の坂道を登って橋をわたると温泉街の入り口だ。すぐ右手に猿ヶ京関所資料館がある。猿ヶ京関所跡でその役宅が資料館になっている。見学の前に座敷に座ってコーヒーをいただく。うまい。道中持ち物、絵図、関所手形等々興味深いものが多い。

旅籠屋丸一に入る。少し休んでから散歩に出る。かつて来たことのあるS氏の案内で西川に架かっている“姉山の吊り橋”に向かう。西川も赤谷湖に流れている。旧三国街道から田んぼの畦道を通り橋に着いた。しかし吊り橋ではなく普通の橋となっていた。昔は情緒があったとS氏はがっかりしていた。しかし橋からの眺めは静かな透き通った水面に新緑が深く映えきれいだ。その先の西川自然観察の森まで行き宿にもどった。宿は広く清潔感に溢れ気持ちが良い。明治に建てられた豪農の蔵の古材を利用して造られたという別棟の“蔵の湯 林”がすばらしい。湯の泉質はカルシウム・ナトリウム硫黄泉(アルカリ性低張清鉱泉 無色透明)効能は神経痛、関節痛、五十肩など。

今日も晴れだ。バスで法師温泉に向かった。昔ながらの佇まいそのままの建物の前に多くの客が待っていた。11時からの日帰り湯に入るためだ。開湯まで付近を散策。法師温泉は旧国鉄のフルムーンのポスターでも有名だ。木造りの大浴場は高い天井とアーチ型の窓により独特の雰囲気がある。4つの浴槽にはそれぞれ中ほどに頭を乗せるための丸太が一本わたされている。温泉は敷き詰められた玉石の間から湧き出し、ときどき気泡が上がってくる。8つに仕切られたそれぞれの浴槽に多くの頭がじっとしている眺めは滑稽にも感じられた。泉質は猿ヶ京温泉と同じであるが、雰囲気が大いに異なる。

温泉から出ると雨が降ってきた。猿ヶ京まで歩くのだ。永井宿のバス停の軒先で沼田駅前で仕入れた菓子パンを2つずつ配り昼とした。幸い雨も上がった。猿ヶ京までおおかた舗装道路であったが、とちゅう旧三国街道の細い山道があって昔がほんのすこしだが偲ばれた。三国街道は佐渡金山で採掘された金銀を運ぶルートとして、また佐渡へ送る罪人の護送に使われた、新潟の寺泊宿から三国峠を経て群馬の高崎宿までの街道だ。

バスで後閑(ごかん)駅に行き、駅前のコンビニで酒を仕入れて電車に乗り込んだ。また飲みながらの旅。高崎乗換えで大宮駅に下車、居酒屋で打ち上げをした。